憂鬱な姉は嘆く
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家の空気が、重い。
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きっかけは、些細な事だったと思う。
だが少々厄介な状態だ。
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衝突したのは我が家で頑固な二人
――父と、弟である。
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物心ついた頃には、父は単身赴任で家に居なかった。
人生の半分位しか同居していない。
私の人生の半分ならば、弟はそれ以下だ。
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弟は、私、母、祖母(祖母は家が近かっただけ)という女しかいない環境で育った。
思春期の男子がどのように父親と接するのか
私も弟も知らない。
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私は同性である母に何でも相談して育った。
女であるからこその悩みは
祖母でも友達にでもなく
母に相談した。
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比べて弟は
相談出来なかったんだと、思う。
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反抗期は、部屋から出てこなかった。
目を合わせなかった。
口を開けば、罵倒された。
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どうやって接すればいいのか分からなかった。
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「放っておきなさい」
母はそう言った。
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私が高校を卒業し、家を出た後は
母と、弟の二人暮らしになった。
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父は、ちょくちょく実家に帰り
弟の部活の発表会や行事に顔を出していた。
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私は、やっと弟が同性の親と過ごす時間が出来たと勝手に安心していた。
弟も無事に高校を卒業し、一人暮らしを始めた。
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昨日、弟に向かっていきなり父が吠えた。
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「うるさい!もう帰ってこなくていい!!」
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どうやら、弟が家に帰る手段について母を問い詰めていたのが気に食わなかったようだ。
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弟はまだまだ反抗期の名残があり、あまり言葉遣いがよろしくない。
反抗期の現役時代はまあ目に余った。
母に向かって罵詈雑言を浴びせる日々。
父は、自分が家を空けている間に弟が偉そうに振舞っている様子に我慢がならないようだった。
しかし、母は止めた。
「何も言うな。私は平気だから。」
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昨日の父の一喝は、堪忍袋の緒が切れたのだろうな、と私は思った。
ならば弟に非があるのだから謝罪すべきだ、と。
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夜中に、弟が階下に降りてきた。
昼間は空気を重くしてごめんと、私と母に謝罪しに来た。
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しかし、父には謝りたくないと。
詳細は割愛するが、弟の話を聞くと、確かに父にも少なからず非があった。
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弟は、
「明日の朝一番の新幹線で家に戻り、もう帰ってこない。」
と母にLINEをしていた。
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母はそれを見て、トイレで泣いた。
目が真っ赤だった。
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私はそれを弟に伝えた。
「二人が揉めるのは好きにすればいいと思うけど、泣く人がいるのはおかしいんじゃないの??」
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弟の言い分は良く分かった。
しかし、このままだと家の空気は悪いままだ。
なんとかしたい。
そう思って、父に弟と話し合うよう伝えるタイミングを伺っている。
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私まで気が重い。
勝手に二人で話し合って解決すれば良いじゃないか。
争いを長引かせるのは好きじゃない。
仲裁を私がする意味が分からない。
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分からないけれど、解決しないからやるしかない。
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全国に頑固者は沢山いるだろう。
しかし、血の繋がった頑固者同士で
令和初日から喧嘩をするのは
いかがなものか。
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頑固者であることのメリットを教えてほしい。
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平穏な空気が流れるのはいつになるのか…。
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♥Hinata♥